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なぜ私たちはTravis Barkerに魅了され続けるのか

2022.01.06

https://twitter.com/travisbarker/status/1388581679162290177

 

「feat. Travis Barker」というフレーズに、私たちはいつまでワクワクするのだろうか。blink-182のドラマーとして、ポップパンク・シーンのトップに君臨するTravis Barkerは2021年、20を超えるアーティストたちとコラボレーションし、現代のロックシーンに新時代のポップパンク・ムーヴメントを巻き起こした。一般的に有名アーティストがフィーチャリングすると言えばシンガーとしてコーラスを吹き込んだり、またはギタリストがギターソロを組み込むといった事を指すが、Travis Barkerはドラマーとしてフィーチャリングしている。それはシンガーがコーラスを吹き込むのと同じで、どんなシンプルなビートもその強烈な個性で「Travis Barkerのビート」にしてしまう。それだけ、彼のドラミングはカリスマ的なのだ。

 

なぜ近年、これほどまでにTravis Barkerがシーンで必要とされるのだろうか。その理由はやはり、Travisが手掛けたMachine Gun Kellyの大ブレイクがキッカケと言えるだろう。2020年にリリースされたアルバム『Tickets to My Downfall』において、Travisは大部分の楽曲の作曲、プロデュースを担当した。さらにMachine Gun Kellyのライブにも帯同、そのカリスマ性でMachine Gun Kellyの人気に火をつけた。アルバムはBillboard 200で1位を記録。ヒップホップやポップス、カントリーにスタジアムロックがひしめく全米チャートでポップパンク・アルバムがトップの座にランクインしたことは、ネクストブレイクを狙う若きアーティストたちの音楽スタイルまで変えてしまった。そのカリスマ性を求め多くのアーティストがTravisにコラボレーションを熱望しているのだ。そしてTravisも、様々なジャンルの若きアーティスト達とのコラボレーションを実現している。

 

 

PUNKLOIDの「feat. Travis Barker」というプレイリストを聴けば、Z世代 (1990年代後半から2000年代生まれの人達) のミュージシャン達の音楽ジャンルに対する考え方の違いを強く感じることが出来るはずだ。これまでのポップパンクを振り返ってみると、時代を重ねるごとにそのサウンド・プロダクションは大きく向上。いかにタイトなドラミングでグルーヴを生み出すか、アグレッシヴなサウンド・デザインでリフを形作るかなど、ハイクオリティなプロダクションは必須だった。しかし、ヒップホップを聴いて育った世代が鳴らすロックに、完璧なサウンド・プロダクションは必要なかった。

 

 

例えば、ウィル・スミスの娘でオルタナティヴ・ポップシンガーであるWILLOWがAvril Lavigneとコラボしたポップパンク・シングル「GROW」は、シンプルでソフトな打ち込みのようなトラックをバックに歌っている。それはZ世代ならではの感覚で鳴らされるサウンドであり、WILLOWだけでなくgraiveやKennyHoopla、Casprらも一緒だ。「ポップパンクはこうあるものだ」という常識を破壊し、「ジャンルの概念なんて知らないね」と言わんばかりに様々な音楽をクロスオーバーさせながら、新しい時代の音楽を作っている。ポップパンクを広く世界に知らしめたblink-182のTravis Barkerがその新常識を牽引しているのだから面白い。

 

 

Travisが運営するレーベルDTA Recordsに所属し、Travisがプロデュースを手掛けるjxdnもこれまでのポップパンクの概念を打ち砕いている。サウンドこそblink-182を彷彿とさせる青々としたポップパンクであるものの、ソロ・シンガーというスタイル、中世的で洗練されたヴィジュアルはこれまでポップパンクシーンにはいなかったタイプだ。Machine Gun Kellyという存在が後続にもたらした影響は大きく、自由なスタイルが許容されやすくなったのは音楽の未来を考えれば良いことだ。

 

 

エレクトロ・ポップなトラックをバックにパンクするSuecoも、一聴すると全時代的なエモ/ポップパンクに聴こえるが、細部に施されたラフなアレンジ、そしてTravis Barkerのドラミングによって現代のサウンドになっている。Suecoの他にもLil Huddy、Powfu、underscores、graiveらは主戦場をエレクトロ・ポップス、オルタナティヴ・ラップ、ハイパーポップに持ち、ポップパンクとは交わることのなかったアーティストだ。Travisの存在によって彼らが現代のポップパンクシーンへ足を踏み入れファンベースを構築してくれることは、State Champs、Neck Deepらがトップを張るポップパンクシーンとってプラスでしかない。

 

 

Travis Barkerが多くのアーティストをプロデュースしたり、コラボレーションするのは最近になってから始めたことではない。blink-182の人気絶頂期から既にポップパンクの垣根を超えラッパー達をコラボレーションしており、成功を収めてきた。Travisの仕事の中で最も印象深いコラボレーターとして知られるのは、Crazy Townで活躍したDJ AMだろう。

 

TRV$DJAM名義でミックステープをリリース、共にライブ活動も行った。スターダムへ上り詰めた矢先の2008年、二人はライブへ向かう為に乗車したプライベート・ジェットで墜落事故に巻き込まれてしまう。幸い二人とも一命を取り留めたものの、DJ AMは翌年コカインと風邪薬、鎮痛剤など数種類の薬物を同時に服用したことによる急性中毒を引き起こしこの世を去ってしまった。Travisは復帰後音楽活動を再開するも、事故のトラウマから飛行機移動を避けてきた。しかし今年、事故後初めて飛行機に乗車したと自身のツイッターへ投稿。「私の人生は変わった。私は今飛ぶことが出来る、自由になった」という言葉が多くのファンが胸を打った。亡くなったDJ AMへの想いは特別なものがあるだろうし、パンクとヒップホップをクロスオーバーさせ、新たな音楽を切り開いてきた過去があるからこそ、今新たなミュージシャン達とのコラボレーションを続けているのかもしれない。

 

 

多くを語らず、寡黙で真面目なイメージがあるTravis Barker。昨年はタレントのKourtney Kardashianと婚約し、セレブ・ミュージシャンの肩書きも手に入れた。プロデューサー、ドラマー、そしてインフルエンサーとして多忙な日々を送るTravisに宿る音楽への情熱の火は、再び燃え上がっているように感じる。言葉で語らずも、その背中でシーンを押し上げていくピュアなエナジーこそが僕たちを魅了する。本記事の冒頭に埋め込んだTravisの「I am a patient boy (私は忍耐強い男の子)」というtweetは、何気ないつぶやきのように見えて、とても奥深い意味を感じてしまう。

Machine Gun Kellyは今年、2枚のスタジオ・アルバムをDTA Recordsからリリースするとポストした。今年もポップパンクを、いや世界のロックを熱狂させてくれるに違いない。Travisはどんな世界を僕達に見せてくれるのだろうか。

 

 

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