2022.03.19
2022年1月31日にアルバム『SORRY, WHAT’S YOUR GENRE AGAIN?』をリリースしたKings and Queens。今回PUNKLOIDでは、結成からこれまでのKings and Queensを振り返りながら、ニューアルバムへの思いや地元・名古屋、ソールドアウトさせた自主企画「BEAST OF EASYCORE VOL.4」、新しいメンバーなどについてたっぷりと語っていただきました。アルバムを聴きながら、インタビューをチェックしてみて下さい。
Answer : Ayato (Singer of Kings and Queens)
まずはファースト・アルバム『SORRY, WHAT’S YOUR GENRE AGAIN?』のリリースおめでとうございます。アルバムのタイトルが、まさに今のKings and Queensのアティチュードを体現しているように感じました。国内だけでなく海外からも反響がありますよね。リリース後の反応を見ていかがですか?
ありがとうございます。反響はやはり自分から見ても大きく感じています。今までの我々にはなかったジャンルの客層にも響いているような感覚がありますね。例えばポップパンク/イージーコア・リスナーだけでなく、メタルコアやポストハードコアが好きなリスナーにSNSなどでフォローをして頂いたりする機会が増えていて、ある意味狙い通りなところはあります笑。
世界中を見渡しても、ポップパンク/イージーコアをベースにこれだけタイムレスに様々なジャンルから影響を受けたスタイルは聴いたことがありません。率直にどのように楽曲制作をしているのでしょうか?本作は「こんなものが作りたい」という理想があって、制作が行われたのでしょうか?
基本的にボーカルである僕が「これだ」と思ったメロディ、展開を作って、そのまますぐに家でできる限り宅録をしてデモを作っています。そのあとの肉付けのタイミングで、今のシーンに合わせた「これやればみんな喜ぶんだろ?笑」みたいな、少しウィットの効いた展開を考えますね。僕自身、かなり好奇心の塊で、世界中の音楽の流行り具合いとかを観るのが好きなんです。
特にKotaroと僕がHIPHOPヘッズで、今の世界の流れを見ていると、この先もしばらくHIPHOPが無くなることはないと思っているので。その流れにノるかソるかは各々の自由ですし、トレンドになっているものの中でも、どの部分をうまく自分のものとして取り込んで行くのか、というプロセスを考えることも自由なのが作曲においては面白いところですね。
今回のアルバムからなのですが、FOADのKSKN(GooDee)に最初のデモを持って行って、一緒に“単純に面白い”ものを作れるよう、肉付けをしていきながらレコーディングをしていくという体制を取るようになりました。
FOADは元々、憧れていた存在でした。名古屋のNICOR in Punishmentが2016年くらい?に開催した「WONDERFUL MOSH FEST」に遊びにいった時に初めてライブを観て圧倒されたんですよ、その感覚は忘れてないですね。今だとタメ口ですけど笑。
アルバムリリースと同時に公開された「Sortie」のミュージックビデオは、今のKings and Queensがどんなバンドであるのかを知るのにぴったりな楽曲であり、ビデオ・ディレクションが施されているように感じました。この楽曲で表現したかったことはありますか?また、ミュージックビデオの撮影はどのように行われましたか?
そもそも「Sortie」というのは「出撃」を意味する、USAF (アメリカ空軍) が使っているフランス語から来た軍事用語なんです。我々の新たな再出発、ゼロからのスタートと考えると、この楽曲はまさに“出撃”という表現しか見当たりませんでした。
そのため、ドローンをどうしても使いたくて、というかどうしても出撃させたくて(笑)友人に依頼をしてミュージックビデオを撮ってもらいましたね。
あとは、“イージーコア”と一口で言うと、明るい部分と暗い部分が同居しているジャンルだと思うので、明るい場所でのカットと、暗い場所でのカット、あとは自分の家で遊んでいる、ある種明るい場面を散りばめたりしました。これらのディレクションは元々カメラマンをやっているドラムのKotaroと僕の2人で最終的にはカット割などを考えて完成させました。実はこれ撮影の裏側、Behind the Scene的なものとして、MVで僕がドラム叩いてる部分も写ってたりするんで見つけてくれるほど観てくれたら嬉しいですね笑。
「再出発」、「ゼロからのスタート」という言葉がありましたが、新しくメンバーにが加入していますよね。彼らとの出会い、そして今のKINGS AND QUEENSにどんなものをもたらしてくれると思いますか?Ayatoさんの目線でお聞かせ頂けたらと思います。
とうとう来たなこの時が!って感じですね本当に笑。サポートを含めて復活という形でもよかったのですが、どうも性に合わなくて、やっぱり正規でガチッと固めたいイメージが自分の中では常にありました。そのこだわりによって音源のRECが滞ってしまったり、アルバム制作においてはさまざまな困難がありました。
各々のメンバーとの出会いは不思議なもので、まずはその一例として最初に入ってくれたJohn (Gt.)に関して説明しますね。
REC等で以前からお世話になってたSuspended 4thの鷲山くんから突然ビデオ通話がかかってきて、もう明らかに酔っ払ってるんですよ笑。それで、その口調のまま「ギターいらん!?」って聞かれて…笑 “ギター”いらん?なのか、“ギタリスト”いらん?なのかすらわからない状態で「欲しい…っすね!」って返事したらちゃんとおもろいギタリスト紹介してくれたんですよね。ずっとイージーコアがやりたくてくすぶってたヤツと知り合ったようで、突然鷲山くんが電話してくれたっていうはちゃめちゃなエピソードです笑。
Yoji (Gt.)、Kotaro (Dr.)に関しては以前、前身バンドをしていた際に対バンを何度かしたEIN STEINというイージーコアバンドがいて、彼らはその元メンバーでもあるんですよね。対バン以降めっきり会ってなかったんですけども、僕の共通の友人の結婚式で偶然再会したんですよ。そこで軽く会話していたらKings and Queensに興味持ってくれて、2人とも一挙に加入してくれたって感じです。共通の友人には感謝しかないですね。ありがとー!笑
あとはDaiki(Ba.)ですね。これもなかなかはちゃめちゃでして…笑 2021年に渋谷THE GAMEでHERAITHが主催の周年イベントがあったんですよ。この日、sunsetinfallが出演ってこともあって、彼らの楽曲で僕がfeat.してる曲があるので、それを再現しに遊びに行ったんです。その日は打ち上げもしっかり楽しんで、んでそこにどの演者でもないヤツが居たんで話しかけたら、ベーシストでイージーコアが大好きだと。もう僕もテンション上がって「最悪、家と仕事用意するから名古屋来い!」って言ったら本当に来ることになりました笑。
なかなかクレイジーなエピソードが多いですがやっぱり、音楽という名刺を持ってることってすごく大事だと思いましたね。
以前の曲「Letter Pack」もその様な意味を持って作ったりしてました、実は。
メンバー全員、「イージーコアが1番!」って思っているわけではないってのもありまして、メタルコアやHIPHOP、jazz、ブルースだったり様々な音楽を好きなメンバーに囲まれています。僕はそれを完全にメリットだと考えていて、音楽的により様々なアプローチで曲が作られていくんだろうなと感じていますね。そういったこれからも含め「震エテ眠レ」!!って意味を込めてあえて“出撃”という表現を使わせて頂きました。
音楽以外のカルチャーもKings and Queensにとって重要な要素であると感じます。特にアーティスト写真やミュージックビデオでもヴィジュアルのキー・イメージとなっていた「車」について教えてください。
ええ?車の話しちゃっていいんですか?止まらないですよ?笑
まあでも、僕が1番人生を狂わされたものは間違いなく車で、切っても切れないものだと思っていますね。父の影響でもあるんですが、幼い頃からクルマが好きで、クルマのゲームとか、めちゃくちゃやってたんですよ。小学2年生の時にやってたElectronic Artsのゲーム内BGMがスゲー良くて笑。MxPxとかFall Out BoyとかBullet For My Valentineとか、全部ハマっちゃいました。特にAvenged Sevenfoldに関してはその曲を聞くためにゲームするほど本当に大好きで、中学2年生くらいの時に人生で初めてライブハウスに行った経験がAvenged Sevenfoldだったりとか。そういった点でクルマによって音楽に繋がったおかげで切っても切れない縁があったりしますね。
あとは、やっぱり自分のクルマですかね笑。シボレーのシェベル・マリブという車種なんですが、1975年製でほんとにオンボロな点はありますけど、オールドマッスル!って感じに仕上がってます。400馬力あって、たまにゼロヨンのレースにも参戦したりしてます。本当に大変なんですよ!夏は渋滞なんてハマるとオーバーヒートしちゃったり、冬は冬で暖気するために近所迷惑したり笑。でも、そういうところはなんか寒い時布団からなかなか出られない自分とかと重なるところがありますね、生き物っぽいというか。
例えば、古いクルマだとボンネットを開けるとほとんど全部のエンジンパーツが見えるんですよ。そういうところから特に古いクルマは機械ではなく生き物だという認識で僕は考えてて、どこでも連れて行ってくれる相棒みたいな感じなんですかね、わからないですけど。“乗っている”というより、前のオーナーさんの歴史も含めて“乗らせて頂いている”という感覚に近いです。
そういう感覚もありきで、メンバー含め我々をどこまでも連れていってくれる存在だと認識してますね。そろそろ自動車税・重量税で約12万の支払い来るんで震えてますけど笑。
「Solo」では現代的なエモラップ/オルタナティヴラップの影響を感じました。こうしたトレンド感をポップパンクにブレンドする手法は意識しているのでしょうか?それとも、自然とこのような楽曲が生まれたという感覚でしょうか?
SoloはIyazっていうラッパーの曲のカバーで、僕が中学生くらいの頃、ZIP-FMでよく聴いてて好きになったんですよね。原曲自体がHIPHOP/R&Bに近いテイストの曲で、なおかつメジャーコードの応酬だったので「これはやるしかないな」と思いました。以前の『Kings and Queens EP』でもSean Kingstonの「Beautiful Girls」をイージーコア・アレンジ&カバーしたこともあって、名曲を改めて別のアプローチで聴かせるのが自分は好きなんだと感じますね。ポップパンク感とHIPHOPをミックスさせる展開自体は、原曲選びの段階でほとんど想像が付きます。そもそもめちゃめちゃHIPHOPヘッズですしね笑
特に最近だと、blink-182のドラマーであるTravis BarkerがHIPHOPの方向へアプローチをしたことがきっかけで、様々なラッパーがポップパンク・テイストの楽曲を作っていることが多いと感じますね。海外だとMachine Gun KellyやLil Aaronなどがパッと思い浮かびます。日本だとGOBLIN LANDやMonypetzjnkmnあたりが海外で盛り上がってきている新しいHIPHOPの形に近いと感じます。だから、ある種今のタイミングがポップパンクとHIPHOPの垣根をぶっ壊すのに1番適しているのかもしれませんね。僕らもクラブでライブしたいです!笑
これは、私だけではないはずですが、このアルバムからは絶妙な名古屋感を感じます。日本のポップパンクを掘り下げたとき、名古屋のバンドを欠かすことは出来ませんし、その歴史の積み重ねをKINGS AND QUEENSからビシビシ感じます。尊敬する地元のバンドやブッカーなどはいますか?また今の名古屋の音楽シーンについても感じていることを教えてください。
名古屋感!初めて言われました笑 やっぱり自分で意図せず出ちゃうものなんですかね〜。
活動している・していないは関係なく、尊敬する名古屋のバンドは山ほど居ます!ONIONRINGやGNSD (旧Goonies Never Say Die!!)、ALL FOUND BRIGHT RIGHTSももちろん欠かせませんね。個人的にハードコア、メタルコアなどの影響が強かったので、a Soulless PainやSHARK ETHIC、NICOR in PunishmentやDCS CREW (ISOLA,HATE CREATURES,That Meaningless) 含め、上前津Club Zionでよく出演していたバンドは今でも大好きです。
あとは欠かせないのが、ENTHとSome Lifeですかね。特にSome Lifeは僕がやっていた前身バンドの時からの昔馴染みで、もちろん全員ライバルだと思っているのですが、その中でも特にボーカルのDaiyaに関しては毎週遊ぶほど、1番の親友であり、1番のライバルだと思っていますね。シンプルにカッコいいし、お互いに無いものを持っているところが感じられていつも刺激を受けますね。
名古屋の、特に名古屋らしいと形容されるようなものはおそらくですが土地柄から来ているものもあると言えますね。名古屋って車でちょっと中心部から30分くらい移動したら田舎になるんですよ、つまりは名古屋市には人が密集してて、でも人口の絶対数が他の県ほど多くないんですよね。この話がどうバンドと関係してくるかと言うと、例えば東京だと人口の絶対数が多いので1ジャンルに対してのバンド数が多くて、イベントを組むにあたって棲み分けがしっかりされる点ですよね。
ポップパンクならポップパンクのイベント、メタルコアならメタルコアのイベント、のように単体でイベントを作り上げて客席を埋めることができる環境があると個人的に感じます。でも名古屋はそれほど人口が多いわけではないので、意図せずともクロスオーバーのイベントが増えていったりすることが多く見受けられます。
どっちが良いとかでは無いのですが、1つのイベントで様々なジャンルを感じることができるのでバンドとしても刺激になり、新しいタイプの音楽ができるキッカケが他の土地より多いのではないかと僕は感じています。おかげで僕らもいろんなジャンルの要素を詰め込んだ楽曲が気兼ねなく作れます。そもそも僕はジャンルなんて必要ないと思ってるので笑。そういった点から、名古屋で活動している事を誇りに思いますね。きっと名古屋のシーンの中に居なかったら、Club Zionそのものが無かったら、今の僕らの音源は産まれていないでしょう。おかげでタイトル通りごっちゃごちゃの、まさに名古屋らしいアルバムになりましたから笑。
2022年2月19日には名古屋にて「BEAST OF EASYCORE」というイベントを主催、そして大成功させました。このイベントのラインナップからは「これからの日本のポップパンク」を築いていく心意気を感じました。このイベントを終えて、出演したアーティスト達について感じたこと、そしてこれからのポップパンクについて感じたことがあれば、教えて下さい。
今考えると、あの日はまさに「名古屋らしさ」を感じさせてくれるイベントだと思います。
どのバンドも確実にその時の100点のパフォーマンスを出してくれている感じが、帰ってきた実感を沸かせてくれました。全バンドかっこよかったんですけど、個人的にとくに感服したのは、東京のイージーコアバンド、A Good Night’s Sleepですかね。実はブッキングした時点では「まだライブで披露できるほど演奏がままならない」という理由で渋られてしまって居たんです。でも彼らはイージーコアバンドと銘打って、MVも出したタイミングで「BEAST OF EASYCORE」に呼ばなきゃ損だと思って、なんとか口説き落としました。
その結果、個人的には想像以上のパフォーマンスを発揮してくれてしっかりとポップパンクリスナーに響いたと思いますし、無理矢理でも呼んでよかったと感じましたね。
彼らだけでなく名古屋のGet All Aroundなども含め、後輩バンドが増えたなと思うライブでもありました。それも僕らの音楽を聴いて刺激を受けてくれているバンドも居たりして、自分達が持っている影響力を感じました。その影響力がどう連鎖反応を起こして新たなポップパンクムーヴメントが起こるかは正直予測はつきませんが、みんなそろそろ気づいている頃合いだと思うんですよね。飽和現象に。
ポップパンクを突き詰めても、ポップパンクには教科書があると僕は思います。それを追い続けるもヨシ、ではあるのです。でも、その教科書をいつか破り捨てて自由帳に描き殴れるようになることが大切だと僕は思います。これからたくさんのバンドが出てくるとは思いますけど、サウンド、ライブの方法から始まり、どのシーンにいるのか…など、今までにないアプローチをしてくることを楽しみにしています。
どんなジャンルも掘り下げていけば根っこが同じだったりもしますしね。ポップパンクの中にも「パンク」という言葉が入っている以上、僕はパンクたるものを感じさせてくれるバンドが増えたらいいなと個人的に思っています。
ポップパンクだけに言えることではありませんが、世界中の音楽シーンがインターネットを通じて同時進行で発展し続けています。名古屋を拠点に活動するKings and Queensも世界中の国々のポップパンク・リスナーからミュージックビデオ、アルバムへ反応があるように感じています。これまでの活動の中で、印象的だった海外からの反応はありますか?
圧倒的にインドネシアですね(笑)
前回のミュージックビデオ『Piece of Peeps』から異常にインドネシア支持が増えたんですよ、なんの因果かは本当にわからないです笑。YouTubeに視聴者分析できる機能があるので、「Piece of Peeps」のアナリティクスを見ると、リスナーのうち約70%の人がインドネシア人だったんですよね。インドネシアに広告のターゲティングもしてないですし、正直謎なところが多いです笑。20万回近く再生されているので、そのうち14万回はインドネシア人≒もう僕らインドネシアのスターになってますからね!コロナ関連が収束の一途を辿ったらインドネシアツアーも念頭に入れています。
最後に、Kings and Queensの次なる野望についてお聞かせください
僕らはずっと変わらず化わり続けるので、みんな出来たら着いてきてくれると嬉しいです!
野外はもちろん、深夜のクラブでもライブしたいです。我々が新しく名古屋に大きなイベントを開催するのもそう遠くない未来でしょう。そして、やはり世界的にイージーコアというジャンルをより認知させたいですかね。まだまだ認知度が低いので「どんな音楽やってるの?」と聞かれた際にイージーコアはおろか、ポップパンクと答えても伝わる人は少数です。「えーっとー…Green Dayの初期の頃のサウンドを激しくしてデスボイスを入れたような~…」なんて説明するの毎回ダルいんで早いとこ伝わる世の中になるように輪を広げまくっていきたいです!笑
Kings and Queens
Official Site : https://kingsandqueensjp.wixsite.com/kingsandqueensjp
Twitter : https://twitter.com/kings_queens_jp
Instagram : https://www.instagram.com/kings_queens_jp/
Bandcamp : https://kingsandqueensjp.bandcamp.com/
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