2021.03.31
本日、新作EP『THE INVISIBLE SURVIVORS 』をリリースしたGood Grief。新体制となって動き出した彼らにインタビューを行いました。4月2日から始まるツアーが終了するまで、複数回に分けて公開していきます!
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PUNKLOID : 3月31日にリリースするEP『THE INVISIBLE SURVIVORS 』、このタイトルに込めた思いは何かありますか?
Yasu : コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界中のあちこちでロックダウンが起こり、社会活動がこれまで通り立ちいかなくなってしまった状況の中でも、”俺たちは生きてるよ”っていうのを表現したかったというのがタイトルに影響していますね。この”Invisible (目に見えない)”という言葉は、イギリスの首相ボリス・ジョンソンがロックダウンの最中に行った会見の中でコロナウイルスのことを”The Invisible Killer”と表現していた事に由来していて、それに対して俺たちは”Invisible Survivors”だよっていう思いを込めてます。
PUNKLOID : 他に候補はあったんですか?
Yasu : いくつか案があったかな?あまりはっきりと覚えてはいないんですが、『Believe EP』でもいいかなと思っていたのはなんとなく覚えています。
Keisuke : 『THE IINVISIBLE SURVIVORS』を超えるようなものはなかったなと思いますね。
PUNKLOID : 先に曲が出来ていたんですか?
Yasu : 半分くらいの楽曲が昨年の5月には出来上がっていて、先行シングルでリリースしたものは、昨年4月にGood Griefが新体制で動き出す段階で完成していました。そのころからKeisukeと二人でデモ音源を作るようになりましたね。
Keisuke : 新体制のGood Griefが始まるとき、YasuとMattの二人を中心にGood Griefが動き出して、2020年の2月くらいには僕が加入することが決まっていましたね。そのあと、じゃあ一緒に作曲しましょうということで、衝動に任せて最初に完成したのが「Sapphire」です。
PUNKLOID : 新しいGood Griefが動き出すきっかけになったのが「Sapphire」なんですね。
Yasu : はい、それと「Believe」も同じ感覚を持っている曲ですね。5年前に初めて作品を発表してから、めちゃくちゃ大変な時期もあったけど、なんだかんだ今が一番幸せなんだなという気持ちがあったんです。ベストなスタートダッシュをきる為にも、Good Griefが動き出した当初を思い起こさせるような曲を作ってみたいとMattに提案し、それで彼が作ってきたデモを基に作り上げたのが「Believe」ですね。
PUNKLOID : 今が一番幸せなんだな、というのはリスナーとしても凄く感じましたよ。「Believe」の歌詞を眺めていると、Good Griefが再び動き出すまでの葛藤や苦難を振り返るような歌詞だと思いましたし、そういう事が言えるのって、前向きに動き出している証拠だと思います。この葛藤や苦難というのは何だったのでしょうか?
Yasu : 前作の『Square One』をリリースした時点で、Good GriefがMattと俺だけになってしまっていたということもあり、精神的にまいってしまっていたんです。「俺はこれからどうなるんだ」、「Good Griefをやっていくのか」。いろんなことを考えていて頭が混乱していました。MattはGood Griefを続けることに100%気持ちを持っていけていたから、じゃあKeisukeを入れてもっかいやってみることになった。Good Griefに人が集まってくるうちに「やっぱりここが一番いいな」って心から思えましたね。
Keisuke : 最初Yasuに会った時、「この人病んでるな」っていうのが第一印象 (笑) でも、今は変わったように思いますね。
PUNKLOID : 楽曲にフォーカスしてみると、「Believe」はState Champsを彷彿とさせるようなみずみずしいメロディが印象的で、特にドラムパートはこれまでのGood Griefにはないグルーヴがあるように感じました。参考にしているアーティストはいますか?
Keisuke : どういう楽曲を意識して作ったというのはないんですが、基本的に作曲はYasuが土台を作って、みんなで肉付けしていくのがGood Griefの作曲の仕方。他のメンバーと俺で、どうやってYasuからOKをもらうかっていうのを意識して考えて作っているイメージですね (笑) 僕はもともとメタルコアシーンの出身なので、ポップパンクとして作った楽曲が、長年ポップパンク・リスナーでもあるYasuに見極めてもらうみたいな感じですかね。あとはレコーディングを自分達でやっているので、細部までかなりタイトに作り込んでいますよ。
Yasu : ギターのSotaなんかは、宅録の現場で「そのフレーズだめ!」とか「もっかい録り直し!」とか、レックに関しては厳しいみたい (笑) KeisukeとSotaは2018年くらいからずっと一緒に曲作りしてるから、その関係を壊さない為にも、僕は静観しています (笑)
Keisuke : 3年くらいずっと一緒にやってるから、二人のやり方はありますね。
Yasu : Sotaは昔のハードロックとかブルースみたいなギター・ミュージックに造詣が深いから、レック中のジャッジもタイトなのかもね。
Keisuke : 同じ音でもどう弾くかとか、かなり細かく何度も議論してますよ。
Yasu : ギターに関して印象的な作業は、「Back in Action」のシンガロングが入るパートの裏で鳴っているメタルっぽいリードの刻みをかなり細かく作りこんだ事。そのギターの刻みにも開放弦の音とか混ぜて、和音っぽく表現することに挑戦してみたんです。Tiny Moving Partsとかのエモ系サウンドにあるような雰囲気を作りたくて。それをメタルっぽいリフにどのぐらいの割合で成分として組み込むかとか、そういうレベルでこだわっています。
PUNKLOID : ドラムはどのようにレコーディングしたんですか?
Ryuto : 全部電子ドラム。MIDIで出して、そこからプラグインに入力してエディットしてもらうみたい流れですね。タイム感は自分で調整してます。僕はポップパンク、ましてや2ビートを叩く事が今までのバンド活動で経験してなかったので、自分のバンドでそれをやるというのはけっこう新鮮でしたね。電子ドラムでもグルーヴが生み出せるように、クリックを聴きながらグリッドに合わせるように意識はしつつ、ある程度ちょっと雑さを残しています。グリッドを完璧に合わせるよりも、前のめりさがあったほうがグルーヴは出ますね。
PUNKLOID : 「Believe」の話に戻りますが、この曲はミュージックビデオにもなっていますよね。撮影の思い出は何かありますか?
Keisuke : ミュージックビデオ撮影の監督、そして編集作業は僕が担当しているのですが、「ポップパンクといえば魚眼レンズでしょ!」という僕なりのイメージがあって、定点で撮る場合にどのようにしてオリジナリティを出すかというところにフォーカスしました。Good Griefは海外のリスナーも多いので、メンバーにテーマカラーを設けて、戦隊モノっぽい感じをイメージにして日本らしさを表現しています。折り紙を使ったのは、低予算でというのもあるんですが、日本らしいかなと思って。海外のファンを日本のバンドとして楽しませるという事に挑戦している感じですね。
PUNKLOID : 「Sapphire」をこの曲を再び動き出す時の一番最初に持ってきた理由は何かあるんですか?
Yasu : 新体制のGood Griefとして、最初に出来た曲といういうのがシンプルに一番の理由ですかね。もうひとつ言える事としては、Ryutoと一緒にバンドをやるという話は、実は4年前くらい前からあったんです。「なんか一緒にやりたいね」ってぼんやり話してた。俺とMatt、Keisukeの三人で動き始めた時、いかにRyutoをバンドに引き込むかというのを考えて作ったのが「Sapphire」。「こういうの叩きたいでしょ?」って。ナンパする為 (笑)
PUNKLOID : (笑) じゃあRyutoくんが加入するきっかけにもなったんですね。
Ryuto : 本当そうですね、いい曲だなって (笑)
Yasu : もともとRyutoは自分のバンドがやりたいって言ってたんですよ。どこかに加入するとかって言うよりも。
Ryuto : そう。俺が加入するタイミングで、Sotaも加入する流れにはなっていたんです。Good Griefって、バンドという共同体でありながら、みんながそれぞれに何かしらスキルを持っている集合体だと思うんです。そこに魅力を感じたというのも、加入するきっかけでしたね。これまで参加してきたバンドは、誰かが舵をとって動かしていた。そういう形ではなく、みんなで良いバランスを保ちながら舵をとって動かしていけるというか。
Keisuke : そういえば、みんなの加入が決定した時、コロナウイルスがちょうど流行真っ只中で、最初のミーティングがZoomだったんです。そこで、RyutoとSotaは初対面、みたいな。
PUNKLOID : 珍しいパターンですね (笑)
Keisuke : 確かに (笑) オンライン・ベースでミーティングして、「いつまでに各々こういう課題をクリアしていこう」というようにして、バンドを会社のプロジェクトを進めていくようにして進められたのも、なんだかんだ良かったのかなとも思います。6月くらいまではそんなふうにして、オンラインでバンド活動を進めていましたね。
Yasu : その時期に出来たルーティーンがスタジオに集まれるようになった今も続いてて、バンド活動に良い影響をもたらしていますよ。僕自身、曲作りに集中できるし。
PUNKLOID : 「Sapphire」の歌詞はどんな思いが込められているんですか?
Yasu : 日本語でやってみたいと思っていた時期があったんですよ。昨年Ryutoと最初に一緒にやりたいねって話をした時は、SUPER BEAVERみたいなバンドをやりたいなんて話もしてたり……。でも、Good Griefは海外にもファンがいるから、彼らに日本語でアプローチしてみたらどうだろう、いう気持ちもありましたね。歌詞の内容は、「過去をちゃんと肯定して、前に進んで行く」。そういう気持ちをいつでも確かめられるようにしたかったし、そういう曲を持っていたかったというか。自分の気持ちが揺るがないように。
PUNKLOID : 日本語詞を入れていくというところが海外向けだったとは驚きです。
Yasu : もちろん、これまで待っていてくれたファンにちゃんと日本語で、もう一度やるよって挨拶がしたかったというのもありますよ。だから歌い出しがドラムから入り、「これでよかった」という歌詞からスタートする。この歌詞からライブがスタートするというのをずっと想像していたんです。
PUNKLOID : 「Sapphire」のコーラスワークは新しいGood Griefの魅力と言えますよね。The Story So Farを彷彿とさせる楽曲に、こうしたコーラスが入ってくるところは相当面白いと思います。どこか、A Day To Rememberの「Right Back At It Again」な感覚も持ち合わせている。コーラスワークのアイデアは誰をリーダーにして進めているんですか?
Yasu : Keisukeがギター/ボーカルをやりたいっていうがあって、コーラスのパートは彼を軸に徹底的にやっていこうという感じにはなっていますね。
Keisuke : もともとメタルコアをずっとやってきて、The Devil Wears Pradaのようなピンのシャウトボーカル&クリーンのギターボーカルというコンビネーションに憧れがあったんです。「Sapphire」に関しては、そのノリを組み込んでみた感じですかね。ハモりに対してこだわりは強いです。カラオケでコーラスだけ練習したりしますよ。
PUNKLOID : みんなでカラオケにいって、コーラスの練習?!
Yasu : はい (笑) カラオケでオケ流して、コーラスの練習 (笑)
Keisuke : テンポを半分に落として、せーので合わせて、みたいな。
Yasu : あの練習が一番好きだったりするね (笑) こういうコーラスワークは2000年代初期のエモ、Copelandとかがコーラスを多重録音しまくってたのにも影響を受けてますね。最近だとBon Iverとか。多重録音されたコーラスが持っている聖歌隊みたいなイメージをパンクに持ち込んでみたかったというのはずっとありました。
PUNKLOID : 「Back in Action」は、シャウトとクリーンの掛け合いが最も鮮やかな一曲ですよね。この構成は誰のアイデアですか?
Keisuke : シャウトのパートは僕が持ち込んでいます。「Back in Action」を作曲してた作業の帰り道、たまたま聴いていたCrystal Lakeの「Mercury」という曲からシャウトをいれてみたらどうだろうというアイデアが生まれました。「Back in Action」のデモは、そのまま「Mercury」の歌詞をシャウトして入れ込んでます。
Yasu : まじか、しらなかった (笑)
Keisuke : そうなんだよ (笑)
PUNKLOID : ピアノのアレンジも良いですよね。
Yasu : もともとギターで作ってたメロディだったんですが、アレンジをしていくうちに、ピアノが一番フィットしたんです。あと、よく聴くとベルの音も入ってるんです、この曲。
PUNKLOID : エンディングに向かう二曲は、どこか謎めいた存在に感じます。
Yasu : 「Monologue」は、個人的に恋愛でうまくいってなかった事がモチーフになっています。この事を相談していた友人もうまくいってなかった。だから、この曲の一人称は僕じゃないんです。その友人が、ひどい男にふられて失恋してて、僕が相談を聞いたりしてたんです。この曲はその子の目線で書いてみた曲です。その子と僕には共通点があって、人には言えないような感情を相手にさらけだしてしまうと、相手が思った通りの自分でいれなくなるというか、そういう葛藤が歌詞になっているんです。
PUNKLOID : 葛藤の歌詞だから、答えが描かれているわけではないですもんね。
Yasu : そうですね。
PUNKLOID : ライブで演奏する予定はありますか?
Keisuke : もちろん、考えはありますよ。どんな形で披露するかは楽しみにしておいてもらえたら。
PUNKLOID : 「Lotus Flower」をエンディングに持ってきたのは何か理由がありますか?
Yasu : EPに入れるかどうかは、割と最後のほうに決まった覚えがありますね。この曲のエンディングと一曲目のイントロが繋がっていて、ループで聴くと繋がっているように聴こえる。そういうトリックみたいなのもありますね。
Keisuke : この曲は、Ryutoが「こういうドラムの曲がやりたい」といってドラムのフレーズを持ってきたことがきっかけで生まれた曲でもあるんですよ。
Yasu : 「これかっこいいから曲にしよう」という感じで制作がスタートしたんだけど、なかなか歌詞が決まらなかったんです。それこそレコーディングの前日まで。僕の友人でアメリカから来ている英語教師がいるんですが、その人との対話を重ねながら歌詞を作っていきました。僕にとってメンターみたいな人なんですよ。人と接する上で生じる不安を受け止めてほしい、という曲になっています。
PUNKLOID : ドラムフレーズは想像してたような曲になったと感じましたか?
Ryuto : もちろん気に入りましたよ。8分の6の拍子って、壮大さを持っていると僕は思うんですよね。一気にブワっとひらける感覚があるというか。そういうノリをGood Griefに持ち込めたらというのがあったので、コーラスワークなどと重なって理想の楽曲になったのはとても嬉しかったですね。
PUNKLOID : 一通り収録曲について、バックグラウンドを聞いたところで、みなさんがこの作品の中で一番好きな曲を教えてもらってもいいですか?
Yasu : おー、どれかな (笑)
Keisuke : ミュージックビデオになっている三曲は自分が撮影/監督しているということもあって思い入れが深いんですが、「Back in Action」に関してはリリックが好き。
Yasu : うわ、泣けること言うね。
Keisuke : そう? 個人的な事だけど、前にやっていたバンドをやめて、そこから音楽には携わる方法としてとカメラを始めた。それがきっかけで、僕はGood Griefに入ることができた。歌詞の中に「I tell my five-inch reflection (5インチに写る自分に言い聞かせるんだ)」という歌詞があるんですが、この5インチって携帯のことで。自分が音楽できていない間、まわりの仲間が新しい音源をリリースして、ツアーして……。頑張りたいけど上手くいかない時の気持ちがこのフレーズを聞くと、込み上げてくるし、奮い立たせてくれる。
Yasu : いーや、ウルっときちゃうね (笑)
Keisuke : 特にSotaとの関係というか。Good Griefに入る前から一緒にいて、作曲も何もできない状態から少しずつそれが出来るようになって。Good Griefにとっての「Back in Action」でもあるけど、俺とSotaにとっての「Back in Action」でもある。演奏する度にグッときますよ。
Yasu : 俺も「Back in Action」が一番好きかも。
Ryuto : 曲的にいえば、「Back in Action」はやっぱり好きですね。もうひとつやっぱり、「Believe」も大切な曲かな。ミュージックビデオでは和気あいあいとした雰囲気を見せつつも、歌詞はシリアス。そういう、どこか影があるというか、闇の部分をあわせ持っている、それがGood Griefなんじゃないかって俺は思っています。それがGood Griefの音楽の核になっていますしね。「Believe」はGood Griefらしさが一番出ているのかなって思います。
Yasu : 「Believe」のイントロのドラムとかいいよなあ。
Ryuto : そこは叩いてて最高の気分になるね。
PUNKLOID : 三人とも「Back in Action」がイチオシということですね。他の二人はどう思っているんでしょうね。
Ryuto : 確かに気になりますね。ツアー終わったら、好きな曲とかも変わってるかも。
Keisuke : かもね (笑)
Yasu : またツアー終わったらみんなで確認してみたいですね。
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