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2022年上半期のパンク・シーンを振り返る : 復活したベテラン・バンド達のアルバム

2022.07.14

 

ここ数年、90年代に巻き起こったメロディック・パンク・ムーヴメントをアンダーグラウンドで支えてきたベテラン・バンド達の再結成ムーヴメントが巻き起こっていた。Belvedereの再結成〜新作リリースに始まり、Satanic Surfers、No Fun At Allが精力的に動き出したことは、かつてのメロディック・パンク・シーンにどっぷり浸かっていた人たちにとって大きな刺激になったことは間違いない。加えて、People of Punk Rock RecordsやThousand Islands Records、Lockjaw Recordsといったレーベルが新旧メロディック・パンク・シーンの時代を繋ぐ役割を担ってきたことも無視出来ない。さらに言えば、skatepunkersなどといったブログの枠を飛び越え、メディアの役割を長年務めてきたウェブサイトの存在も、メロディック・パンクを単なる過去の遺産にしなかった意味で忘れてはいけないと言えるだろう。

 

▶︎2022年シーンに戻ってきたバンド達

▶︎2021年を振り返る : 再びパンクシーンに戻ってきた再結成バンド達のリリース・ラッシュ!

 

 

一度は下火になったものの、再び加熱する世界中のメロディック・パンク・シーンから懐かしいバンド達の驚くべき新作が今年に入って続々とリリースされている。長いブランクは何のその、全く衰えを感じない、むしろ味わい深くアップデートされたかのようなニューアルバムにずっとメロディックパンクを好きでい続けた真のマニア達が唸らない訳がない。PUNKLOIDでは、2022年上半期にリリースされたベテラン達のニューアルバムの中から、傑作と呼べるものをピックアップしてみた。

 

Pulley 『The Golden Life』

 

元・メジャーリーガーでコーチも務めながら、オフシーズンにパンクシンガーとして活躍してきたScott Radinsky在籍のPulleyが、8年振りのニューアルバム『The Golden Life』をSBÄM Recordsからリリースした。かつてはEpitaph Recordsのメロディック・パンク枠を盛り上げ、確固たる人気を誇ってきた彼ら。ここ数年はあまりアクティヴだった印象はないが、1994年から一度も活動休止、解散することなくマイペースにバンド活動を続けてきたということが何より素晴らしい。Lagwagonの輝かしいエレメンツを下地としながら、Pulleyらしさとも言うべきセンチメンタルでちょっぴりダークなサウンド・デザインは健在だ。カリフォルニア州シミバレーと言う土地が育んだそのサウンドはパンクロックの無形遺産といっても過言でない。

 

 

 

復活したHandheld

 

そんなPulleyがバリバリ現役だった90年代後期から2000年代初頭、本格的な盛り上がりを見せたアメリカン・シーンと肩を並べる盛り上がりを見せたのが、カナダのシーンだ。再結成ムーヴメントが巻き起こった2010年代後期から現在にかけて、90年代に活躍した多くのバンドが再結成を遂げている。その中でもHandheldの復活は印象的なモーメントであり、14年振りとなったニューアルバム『A Canadian Tragedy』は全く変わらぬ彼らの魅力がそのまま詰まった快作と言えるだろう。VHSのざらざらとした質感でしか動く彼らを見ることが出来なかった日本国内のメロディック・ヘッズにとって、彼らが現行ミュージシャンとして2022年に活動していることだけでも涙が出る程の出来事のはずだ。

 

 

ミュージックビデオにもなっている「Leaving Candyland」やメロディック・シーンのグローバル・インフルエンサー女性活動家Émilie Plamondonをフィーチャーした「Bend the Iron」など非常に優れたリードトラックを持つ新作は是非フレッシュなうちにチェックしておきたい。

 

▶︎Passage 4、26年振りのニューアルバムから先行シングル「Among The Dead」MV公開!

 

Handheldと同じ時を過ごしたスウェーデンのメロディック・パンク・バンド、Passage 4もPeople of Punk Rock Recordsから、26年振りとなるニューアルバム『A Molotovcocktail Blues ‎』をリリースした。彼らの存在は知ってはいても、その姿を見たことがない、聴いたことがないというファンも多かったはず。20年以上の時を経て蘇ったメロディック・パンク+インディ/オルタナ・サウンドは、現代のロック・トレンドとも妙な親和性が感じられる。

 

IGNITE 『IGNITE』

 

新たにボーカリストEli Santanaが加入したIGNITEも6年振りにニューアルバムをリリースした。そのタイトルがセルフ・タイトルだったことや、リリース後の精力的なツアー活動などを見ると、新体制となって相当な気合いが入っていることが伺える。1994年から2020年までバンドの顔としてマイクを握ってきたZoli Téglásの脱退はIGNITEにとって大きな損失だった。彼の居ないIGNITEに興味はないというファンもいるだろう。結成から30年近いバンドが伝説的なフロントマンを失えば、そのまま消滅の一途を辿ることが多いと思うが、IGNITEはZoliのレガシーを引き継ぐ新ボーカリストを手に入れた。これから、まだまだ長いIGNITEの第2章から目が離せない。

 

Hot Water Music 『Fell the Void』

 

本場カリフォルニア仕込みのメロディック・サウンドとはまた別の文脈で育まれたきた、いわゆるゲインズビル系のパンクを鳴らすHot Water Musicの新作は、Rise RecordsからEqual Vision Recordsへと移籍し、何かが吹っ切れたようなパンチのあるサウンドで話題となった。ニューアルバム『Feel the Void』は、ダークなイメージのある彼らにとって非常にポップな作品で、古き良きメロディック・パンクのエレメンツが散りばめられており長年のパンク・リスナーにとって「ニヤリ」とする瞬間がたっぷりだ。Steve AlvaやJereme Knibbsといったプロ・スケーターが登場するミュージックビデオ「Collect Your Things And Run」では、彼らのパンク・ルーツへの回帰が感じら、第1弾先行シングルとして発表された「Killing Time」では、壁一面にパンクのフライヤーが貼られ、エネルギッシュにプレイするHot Water Musicの面々に思わず熱くなる。

 

 

彼らの系譜とも言えるAnn Berettaも新作『RISE』をリリースしているので、Hot Water Musicと合わせてチェックしてみると良いだろう。他にも様々なベテラン・バンド達のアクティヴな様子は日々PUNKLOIDでレポートしていく。新しいメロディック・パンクが生まれ続けるのも、彼らが何十年も前に活躍してきたことが大元のきっかけになっているのだ。

 

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