2024.12.24

ポップパンクにハードコアのヘヴィネスを注入したイージーコアは、今も根強い人気を誇り、続々と新しいバンドが登場している。ここ数年の中でも、新しく結成されたバンドが2024年に頭角を表し始めた。ここでは、これからのシーンを盛り上げるフレッシュなバンドにフォーカスし、シングルをまとめてみたいと思います。
▶︎Lolitslea 「Exit Plan」
ニュージャージーを拠点とする女性ボーカル・ポップパンク・トリオ、lolitslea。本楽曲までにシングル「Call It A Fling」「Favorite Singer」「What’s That To You?」と頻繁にリリースを続けてきており、「Exit Plan」では、元A Day To RememberのギタリストのTom Denneyをプロデューサーとして起用しレコーディングを行なった。Tomによって仕立てられたサウンドプロダクションは、2010年代のA Day To Rememberそのままで、重厚なコーラスワークやタイトなブレイクダウン、そしてエモーショナルなノスタルジアをたっぷりまとい、パワフルに展開されていく。バンドは、「”Exit Plan”は、リミナル・スペース、バックルーム、そして2008年当時のような人生には決してならないことを悟るというテーマをぐるぐると巡っているんだ」とコメントしており、10月に発表されたアルバム『Nothing Lasts Forever!』の全編に渡って、そのアトモスフィアがふわりと燻らされている。
▶︎UNWELL 「Trip The Wire」
デトロイトを拠点に活動するオルタナティヴ・ポップパンク・バンド、UNWELLは、2023年にデビュー・アルバム『Trial & Error』を発表し、耳の早いポップパンク・ファン、特にヘヴィなリフを内包したイージーコア・ファンを熱狂させた。それから半年程が経過し、UNWELLが突如ポップパンクの名門レーベルPure Noise Recordsとの契約を電撃発表し、本楽曲をリリースした。彼らの代表曲である「Epiphany」といったカラフルな楽曲ではなく、ハードコアに接近したシリアスなスタイルで、さらにファンを驚かせた。少し前のTrash Boatを彷彿とさせる、ボーカルのカリスマ性を全面に押し出したスタイルは、ポップパンクとして出現した彼らを、どこへでも連れて行ってくれるような可能性を感じさせてくれる。2025年、彼らの躍動に注目だ。
▶︎Action/Adventure 「Big Al Dente」
イリノイ州シカゴのバンド、Action/Adventureのシングル「Real Juicer Hours」に次ぐニュー・シングル。彼らはBIPOC (*アメリカの白人以外の人種を意味する言葉で、その人たちの多様な文化を無いものとせず、リスペクトするための呼称)のメンバーのみで構成されており、「Pop Punk In Color」というフレーズを掲げ活動してきた。そのサウンドは、レーベルメイトのFour Year Strongの系譜にありながら、さらにハードコアに推し進めたり、より繊細にメロディを紡いだりとユニックなアレンジで注目されている。本楽曲は、エンディングで差し込まれる強烈にヘヴィなブレイクダウンが印象的で、デスコアにまで接近するほどだ。
▶︎Mirabelle. 「Kiss of Death」
フランスを拠点に活動するmirabelle. は、「Chunk! No, Captain Chunk!の後継者」としてイージーコア・ファンから熱烈な歓迎を受け、シーンに登場した。Chunk! No, Captain Chunk!、古くはCan’t Bear This Partyから始まったフレンチ・ポップパンクの独自性はこれまで様々なバンドによって伝承され続け、ポップパンク・シーンの片隅でコアな人気を保ち続けてきたが、mirabelle.の存在は、その伝承をさらに次の世代へと接続するような可能性に満ち溢れていると言えるだろう。「Kiss of Death」は、インディ、オルタナの軽妙な感覚、トゥウィンクル・エモにも通ずるメロディックなフレーズに加え、サックスの登場も衝撃的で、単純にイメージするイージーコアの概念を軽々と超えていく。この自由奔放さがmirabelle.の可能性を拡張してくれる。
▶︎Launcher No.8 「Mediocre」
大阪を拠点に活動しているポップパンク/イージーコア・バンド、Launcher No.8は、2024年、急激にブレイクを果たした国内アクトのひとつだ。彼/彼女たちの人気曲であり、2024年11月に公開された「Mediocre」のミュージックビデオは、ブレイクの理由を感じるのに必要なLauncher No.8の魅力がたっぷりと詰まっている。A Day To RememberやChunk No! Captain Chunk!、さらにAbandoned By Bearsからmirabelle.といったポップパンク/ハードコア、イージーコアの様々なタイプのスタイルからヒントを得ながら、日本のバンドらしいトリッキーなアレンジでLauncher No.8のサウンドを確立。その最も特徴的な要素であるボーカリストRUKAの柔らかなクリーンパートとハードコアなシャウトのコントラストや愛らしさは、瞬く間にシーンに伝染し、川崎CLUB CITTA’で開催された「MIXED HELL」への出演などという形で結実した。これ以上、どれほどのブレイクが期待出来るのか、それはおそらくバンド自身も想像出来ないほど明るい未来が待ち受けているのではないだろうか。
▶︎Midfield 「Groundhog Day」
フィラデルフィアのバンド、Midfieldは2016年のデビューEP『Wishing, Wanting』のリリース以来、小さな成長を積み重ねながら、オンライン・プロジェクトからバンド体制となり、2022年には本格的に動き出し、シングルリリースを続けてきた。この夏、満を期してリリースしたデビューアルバム『Midfield』は今回ピックアップする「Groundhog Day」以来にリードチューンがあるが、ヘヴィ・ポップパンクというキーワードを持つこの記事では、この楽曲を一番に選びたい。Neck DeepやState Champsといったシーンのトップバンドにも匹敵するメロディセンスとボーカルワークを持つ彼らであるが、この楽曲のように初期Chunk! No, Captain Chunk!のようなスタイルさえもモノにしてしまう。計り知れないポテンシャルを持つMidfield、ぜひアルバムを通じて聴いて、そのサウンドスタイルの多様性をチェックしてみてほしい。
▶︎Ditz 「Kool Aid」
ニュージャージー・ライトスタウンを拠点に活動する4人組、Ditzの存在感は異質だ。Belmontを彷彿とさせるプログレッシヴ・ポップパンク/メタルコアを炸裂させたかと思うと、楽曲中盤で転調、トゥウィンクルなエモへと変貌し駆け抜けていく。言葉でその衝撃を表現することは非常に難しいが、アートワークやソーシャルメディアでのPR、それら全てに「ただモノではない」雰囲気が漂っている。彼らのフルセット映像を見ていると、インディロックやオルタナ方面に属しているというのが本来のところだろうが、それでも異質であることには変わりがないだろう。しかし、時代は今、どこにも属さない、何にも当てはまらない、そういう音楽を求めているはずだ。Ditzをフォローしておいて損はないだろう。
▶︎Protect Your Heart 「Speedrun」
ロサンゼルスを拠点に活動する5人組、Protect Your Heartは「Pop Punk with Breakdowns」を掲げるバンドであるが、時にメタルコア/ポストハードコアとしてもその魅力を放ってきた。2024年は、ほとんどポップパンク/イージーコア路線へと落ち着き、コンスタントにリリースを続けてきた。サウンドプロダクションもパンク寄りになったが、最新曲「Speedrun」のブレイクダウンではKnocked Looseを彷彿とさせる「ARF ARF」というフレーズも飛び出す。決して派手な存在ではないものの、すべてのシングルでファンを楽しませてくれるバンドだ。パープルに統一されたヴィジュアルイメージも美しい。