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【2024年上半期】ベテラン達が躍動! 聴き逃せないメロディックパンク 名盤7選

2024.07.11


 
2024年3月に開催された「PUNKSPRING 2024」はNOFX、SUM 41の最後の来日公演の一部であり、本年上半期のパンクロック、特にメロディックパンクにおいては印象的なイベントであった。もちろん、彼らのようなベテランに加え、これからのパンクシーンを牽引していくフレッシュなバンド達の活躍にも目を見張るものがあったのは言うまでも無い。昨今はジャンルの境界線を軽々と超えていくような、自由なスタイルを持つアーティストたちがポップパンク、メロディックパンク、パンクロック、さらにはオルタナ、ヒップホップなどなどをクロスオーバーさせ、一つのジャンルに捉われない活動を行なっているが、パンクロックというシーンを確立したベテラン達も、そういった若手アーティストたちの創作に感化され、多彩なスタイルをフレーバーとして自身のスタイルに燻らせるようなソングライティングを見せることもあった。古くからのファンにとっては余計なものと捉えられたかもしれないか、彼らがバンドの根っこにあるルーツに立ち返る意味でも、若手アーティスト達のクリエイティヴィティはベテランアーティスト達に良い影響を与えたのでは無いだろうか。逆に、未来派への志向とは逆に、次の時代のクラシックなもの、例えばblink-182などといった90年代後期にスケートパンクをポップパンクへと導いたサウンドが新たな時代にクールなものとなってリバイバルしている。話を戻して、このコラムでは、世界的に有名なパンクロック、特にメロディックパンク・シーンのアーティストにフォーカスし、2024年上半期にリリースされた印象的なアルバムをレビューしてみたいと思う。
 

 

 

 

 
▶︎Green Day 『Saviors』
(Reprise Records/Warner Music Japan, Release Dates : 19 January)
https://wmg.jp/greenday/discography/28732/
 
前作『Father of All…』から4年振りのリリースとなった14枚目のフルアルバム。Green Dayの中でも名盤と名高い『Dookie』『American Idiot』を手掛けたRob Cavalloをプロデューサーに迎え制作された本作は、先行シングル「The American Dream Is Killing Me」のヒットから、リリース前から名盤であることが約束されていたようなものであった。パンクロックという音楽ジャンルのトップバンドであるというよりは、すでにGreen Dayという単独のビッグバンドとしてジャンルという括りに縛られることのない確固たる人気を持つにもかかわらず、揺るぎないパンクロックのルーツを今も持ち続け、ポップパンク/メロディックパンクの純粋な輝きを追い求める姿勢は本作でも変わらず、多くのミュージシャンにとって刺激となっただろう。「Look Ma, No Brains!」「Dilemma」「One Eyed Bastard」ほか、激動の時代を体現するような楽曲がひしめくこのアルバムは、時間の経過と共にさらに評価されていくに違いない。
 

 

 

 
▶︎Sum 41 『Heaven :x: Hell』
(Rise Records, Release Dates : 29 March)
https://greenday.lnk.to/saviors
 
「PUNKSPRING 2024」で最後の来日を果たしたカナダのポップパンク・レジェンド、Sum 41のラストアルバム。タイトル通り「Heaven」サイドと「Hell」サイドを持つダブルアルバムで、メタルとポップパンクをクロスオーバーさせてきた彼らが最後の力を振り絞り作り上げた集大成と言える大作に仕上がっている。Sum41らしさ溢れるポップパンク・ナンバー「No Quite Myself」や名作『Chuck』を彷彿とさせる「You Wanted War」など、向こう数十年に渡って大切に味わいたくなるアルバムである。最後のライブは2025年1月に行われる。
 

 

 

 
▶︎Ken Yokoyama 『Indian Burn』
(PIZZA OF DEATH RECORDS, Release Dates : 31 January)
https://www.pizzaofdeath.com/ken8thalbum/
 
前作『4Wheels 9Lives』からおよそ3年振りのリリースとなる8枚目フルレングス。シングルリリースにワンマンツアー、2023年の激動を経て、さらに加速していくKen Yokoyamaの新作は、彼らにしか作れない誰も真似できない独自性と、その中で現状に満足しないクリエイティヴな挑戦が感じられる作品であると言えるだろう。歌詞においてもワンフレーズごとにさまざまな人生を生きる人に共感をもたらし力を与えるパワーがあり、さりげない荒っぽさを残したサウンドも聴くたびに湧き上がるアルバムへの愛着をより一層強くし、隠し味のような役割を果たしている。何となく忘れていた感覚、忘れてしまいがちな当たり前が何よりも素晴らしいものであるのだと痛感させられた作品。
 

 

 

 
▶︎Alkaline Trio 『Blood Hair, And Eyeballs』
(Rise Records, Release Dates : 26 January)
https://rr.lnk.to/BHE
 
blink-182での活動を終えたMatt Skibaが本格的にAlkaline Trioに戻り、2018年の『Is This Thing Cursed?』以来6年振りにリリースした通算10枚のフルレングスとなる本作は、blink-182での活動を経たからこそ浮き彫りとなるMattのカリスマ性が、共にソングライティングを行いバックボーカルを務めるDan Andriano、ドラマーDerek Grantのカリスマ性と混ざり合い、純正Alkaline Trioサウンドとして発せられているのがビシビシと伝わってくる仕上がりとなっている。彼らのヒット曲で長年のライブアンセム「We’ve Had Enough」を彷彿とさせる「Break」や、トリオの円熟味溢れる「Bad Time」ほか、Alkaline Trioのさまざまな魅力が味わえる作品になっている。Alkaline Trioの新章幕開けに相応しい快作。
 

 

 

 
▶︎NOFX 『Half Album』
(Fat Wreck Chords, Release Dates : 19 April)
https://fatwreck.com/products/half-album
 
2021年の『Single Album』、2022年の『Double Album』に次いでリリースされたEP。これがNOFXの正真正銘、最後の作品となる。収録されている内容は上記のアルバムとはテイストが違い、本来のNOFXの持つサウンドスタイルからはやや異なる路線の楽曲が並ぶ。やはり中でもHi-STANDARDへ提供された「I’m a Rat」のNOFXバージョンはこの作品の中でもキラリと光る楽曲で、日本のメロディックパンク・リスナーにとって特別な思いで聴きいってしまう楽曲であると言えるだろう。「PUNKSPRING 2024」での来日も記憶に新しく、彼らがもう2度とNOFXとして来日しないとは未だに信じられない気持ちだ。NOFXの最後の作品としては物足りないかもしれないが、間違いなく2024年上半期のハイライト作であることは間違いない。
 

 

 
▶︎Hot Water Music 『VOWS』
(Equal Vision Records/End Hits, Release Dates : 10 May)
https://hwm.lnk.to/VOWS
 
2024年、結成30周年を迎えたゲインズビルのパンクロック・バンド、Hot Water Musicの前作『Feel the Void』から2年振りとなる通算10枚目のフルアルバム。これだけ短期間でアルバムを作り上げたのは、彼らのキャリアを振り返っても1999年から活動休止直前の2004年ごろまで。30周年を迎え、再びエネルギッシュに活動ペースを上げていることには驚きを感じる。本作は、2017年に加入したThe Flatlinersのギター/ボーカルであるChris Cresswellが、Hot Water Musicに新たな息吹をもたらしており、随所でそれが感じられる。多くの、特に古くからのHot Water Musicのファンからすれば、Chris Wollard、Chuck Raganといった二人のカリスマのコンビネーションだけで満足なのかもしれないが、現在のHot Water Musicは、これからの10年、20年を見据えている。エモーショナルでメロディアスな「Menace」、グランジ、オルタナの香り漂う「Remnants」など従来のパンクロックが持つエネルギッシュなスタイルからややトーンを落とした”渋さ”が溢れる本作は、聴くたびに味わい深いものと言えるベテランにしか作れないアルバムだ。
 

 

 

 
▶︎SNUFF 『Off on the Charabanc』
(10 Past 12 Records/WATERSLIDE RECORDS, Release Dates : 22 March)
https://snuffuk.bandcamp.com/album/off-on-the-charabanc
 
1986年から活動を続ける大御所パンクロック・バンド、SNUFFの前作『Crepuscolo dorato della bruschetta borsetta calzetta cacchetta trombetta lambretta giallo ossido, ooooooh cosi magnifico!』から2年振りのリリースとなった通算12枚目のフルアルバム。本作は、往年のSNUFFらしさ溢れるパンクロックが炸裂したアルバムでありながら、Duncanのフォーク・ミュージックへの愛も詰まった作品に仕上がっている。典型的なSNUFFスタイルのスカとパンクロックのミックスで満たされた仕上がりには、2000年に発表された『Tweet Tweet My Lovely』を思い出すファンも多いに違いない。アルバムの半分はアコースティックで構成されており、これについてDuncanは、「フォーク・ミュージックへの愛の表現なんだ」と明確に説明している。1980年代中期に始まった頃のSNUFFは、元々フォーク的なスタイルもやっていたというから、40年近い時間をかけて、再びルーツに戻っていっているのだろうか。バンドの歴史の重みも感じるとともに、止まらない創作意欲のエネルギーに圧倒される本作には「Go Easy」「Booster」といったパワフルなナンバーもたっぷり収録されているので、どんなスタイルのSNUFFが好きでも楽しめるはずだ。
 

 

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