2022.03.18
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、ウクライナに住む多くの市民が国外へと避難を始めた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると2022年3月15日時点でウクライナ国外へ避難した難民は300万人を超えている。日本も難民認定の枠外の特例として周辺国からの避難民の扱いで受け入れ数を増やしているが、隣国ポーランドなど周辺国の受け入れは限界に達しつつある。
ウクライナ侵攻のニュースが全世界に発信されてから、ヨーロッパのパンクシーンは連帯しすぐに動き出した。特にポーランドのパンク・バンド達は、ウクライナ国境での難民受け入れボランティア活動に参加し、食料物資の供給やメンタル・ケアなどにあたっている。2019年に初来日を果たしたポーランドのメロディック・ポップパンクバンド、CF98のメンバーであるKarolinaとMateuszは実際に3月の初めから国境沿いでボランティア活動を行い、今週からウクライナ難民をサポートする為の寄付も募るツアーを行う。
また、チェコを拠点に活動し、来日経験もあるスケート・パンクバンドKRANGのベース/ボーカリストStanleyは実際にウクライナ難民を受け入れ、共に生活を送っている。今回、Stanleyにウクライナ周辺国へ避難した人々の状況、受け入れに至った経緯、そしてパンク・コミュニティの一員として人々をサポートする想いについて話を聞いてみた。
Stanley、久しぶりですね!先日、あなたがFacebookでウクライナから避難してきた人たちをサポートしていることを知りました。ホッとしている子供達をみて、どれだけあなたが素晴らしい事をしているかと誇らしくなりました。避難してきた人々を受け入れたきっかけは何ですか?実際に今、彼らとどのような生活を送っていますか?
久しぶりだね!そう、私の住んでいる場所は小さな町で村のようなところなんだ。だから大都市の人々に比べて家のスペースに余裕があるんだよね。私の姉妹の友人がウクライナの領事をしていて、戦争が始まり、ウクライナの人々が国外へ避難を始めたとき、何人かを受け入れることができないかと相談があったんだ。それで、出来る限り多くの家族を受け入れることに決めたんだよ。
それから私の別荘、そして自宅と社宅に16人が移り住んでたんだ。もう7人は私の姉妹の家に住んでいるよ。彼らは控えめな性格で、感謝の気持ちを忘れない素晴らしい人たちさ。だって、荷物を2つにまとめ、全てを捨てて他の国へ行くなんて想像もつかない心労があると思いませんか?それなのに彼らは感謝の気持ちを持って私たちと接してくれるんだ。ウクライナでは18歳から60歳までの男性は出国禁止だから、避難する人たちの9割が女性と子供。特に子供たちは大変な思いをしているから、私は彼らがこの苦しい体験を忘れられるよう手助けもしているよ。
心理学の専門家でもないですが、パンク・カルチャーを愛する私が出来ることはあると考えているんだ!8歳のアルチョムは最初に避難してきたグループの一番年上の子で、避難後も退屈そうにしていた。私は自分が昔使っていた古いスケートボードをあげて一緒に遊び始めたのですが、すでに彼は素晴らしいスケーターになっているよ!彼はスケートボードにとても興奮し夢中になっているんだ。小さい子には、私の犬(ジャックラッセルテリアのペニー)を連れて行って、庭で一緒に遊んであげると、とても喜んでいました。彼らはチェコの子供たちと一緒に遊んだり、新しい生活の為に避難先の言葉を学ぶ必要があるので、長期的にどうなるか、まだまだ分からないことも多いです。
避難した人たちはは今どのようにして毎日を過ごしていますか?
今やっと落ち着き始めたところだよ。そこで彼らからどのようにして避難してきたのか、どんな生活を送ってきたのか、食事をしたりしながら話せるようになったんだ。彼らのリアルな状況をぜひシェアしたいと思うよ。
難民にとって最初の日、そこからの1週間は行き着く暇もない程とても忙しい。重たい荷物を持って40~50時間かけて移動することがほとんどだから、避難先の家に到着したときは歩けない程に疲弊して、混乱していた。だからまずは、ゆっくりとシャワーを浴びたり、Wi-Fiに接続して家族や友人に無事を伝えたり、暖かいベッドでくつろいだりすることが必要だった。それでも到着して3日後には、現地政府で正式な難民ビザを取得するためにサインをし、すべての書類を揃える必要があるから、避難したとしても完璧に落ち着くには時間がかかるんだ。
ビザの申請も大勢の人たちが待っているから、子供と一緒に何時間も寒いところに立っていなければならない人もいて、待機している人たちはイライラしていたりするんだけど、そんな人たちの為に、温かいお茶やコーヒー、お菓子を持ってきてくれるボランティアがたくさんいる。そうやって「助けよう!自分が何か出来るかもしれないから」とたくさんの人が自主的に動いているよ。
避難先を確保し、ビザを取得した後、子供の教育、そして大人達の新たな仕事先をどうしていくか、という段階へ進んでいくんだけど、これは本当に大変な問題なんだ。避難した人たちのほとんどは小さな子供を持つ母親であるから、子供を家に残して働きに出ることができないという問題もあるからね。これは私たちにとっても今後の大きな課題だと思う。
政府やボランティア団体の支援もあるんだけど、すべてが始まったばかりで、毎日新しい情報が入ってくるから大変なんだ。だけど今は、テレビを見たり、インターネットで戦争に関する情報をチェックしたり、ゲームをしたり、音楽を聴いたりと、他の人たちと同じように過ごすことが大切だと思うよ。大変な経験をしたんだからね。
あなたのバンドはこれまで、日本を含む様々な国をツアーしてきました。パンクバンドKRANGとしての活動で得た経験は、避難した方々をサポートするのに、役立っていますか?
パンクバンドとして世界中をツアーして生活していると、難民と接触したときに役立つことが一つあるんだ。それは、長く旅をしたからこそ、生活の為にまず、何が必要かがわかるということだ。乾いたベッド、熱いシャワー、そしてインターネット! 他のものは実際、あまり重要ではありません。食べ物は冷たくてもいいし、派手な服も必要ないよ。あくまで最低限の話だけどね。
あなたの他に助けが必要な方をサポートしているパンク・ミュージシャンを知っていますか?
パンク・ロック、スケート・パンク、ハードコアの全コミュニティが協力しているよ! 連帯の大きな波、寄付金を集める為のツアーやライブ、人道的・物質的支援、バンドメンバーがツアーバンを使って国境から安全なヨーロッパ各地まで難民を運んだりしまくってるんだ。私は我々がいるヨーロッパのパンクシーンを誇りに思っています。人の命を救うためにパンクができることは必ずあるんだ。支援と変革は、手段と意志を持った人々から生まれる。僕が好きなバットマンもそうなんだ!
▶︎KRANG
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