NEWSお知らせ

2024年アイリッシュパンクのベスト・シングル5選

2024.12.26


 
2024年にリリースされたアイリッシュパンク周辺のシングルをピックアップしました。THE CHERRY COKE$の最新作やDropkick Murphysの怒れるシングル、The Rumjacksの革新的なアレンジからThe Young’unsといった精神的なパンクのケアの精神を持つアーティストの活躍など、有名どころからアンダーグラウンドまで優れたシングルがリリースされた1年でした。
 

 
▶︎Dropkick Murphys 「Sirens」
Streaming : https://dropkick-murphys.ffm.to/sirens
パンクの名曲がたくさんリリースされるということは、それだけ人々は生活に不安や怒りを持っているということなのかも知れない。パンデミックを経て、世界が大きく変わり、新しい時代が始まっていく中で、その葛藤を、言葉にならない感情を、芸術的に表現するパンクロック・バンドに人々が共鳴するのは当然だろう。ここ数年もパンクロックやアイリッシュパンクのさまざまな名曲が登場したが、2024年はDropkick Murphysがストレートなパンクチューンで、しかも「Sirens」というタイトルで、これだけ刺々しい労働者階級の怒りをぶちまけ、支持を得たことは印象的であった。この団結の促す楽曲の持つ意味を紐解くキーワードは「分断」だろう。特にアメリカは直近で、トランプなのかハリスなのか、選択を迫られた。それは家族同士でどちらを支持するのかさえ表明することを困難とする、厳しい選択だった。「Sirens」は労働者階級を搾取する一部の億万長者を批判し、彼らを倒すために団結することの重要さをストレートに訴えている。これだけ怒っているDropkick Murphysは見たことがない。
 

 
▶︎THE CHERRY COKE$ 「PEACE ISLAND」
Album Streaming & Download : https://orcd.co/6lkrk47
日本が誇るアイリッシュパンク・バンド、THE CHERRY COKE$が、結成25周年の第1弾シングルとして発表したこの曲は、バンドが結成された東京都大田区の「平和島」を舞台とし、結成前夜の1999年をイメージして作られたミュージックビデオが大きな話題となった。細部に至るこだわり、豪華な客演、アイリッシュパンクの概念を常に更新し続けてきたTHE CHERRY COKE$の革新性がこの歌にはあり、映像の隅々に感じられる。バンドはこの曲が収録された最新アルバム『LOVE THY DRUNX』を引っ提げたツアーを敢行中で、26年目も変わらぬクリエイティヴィティでファンを楽しませてくれるだろう。
 

 
▶︎The Rumjacks 「An Irish Goodbye on St. Valentine’s Day」
Streaming : https://snd.click/irishgoodbye
オーストラリア・シドニーを拠点に、現在ではグローバルな人気を持つフォークパンク/アイリッシュパンク・バンド、The Rumjacksの「An Irish Goodbye on St. Valentine’s Day」は、2025年にリリース予定のニュー・アルバムからの先行シングルである。まるで映画の主題歌のようなドラマ性を持つこの楽曲は、ラブソングでうまくいかないカップルの曲となっている。バーでの待ち合わせに遅れた男、うんざりして家に帰ってしまう女。すれ違いの中で立ち現れてくる、アイリッシュ男の葛藤……。新しい彼らのアンセムとして今後歌い継がれていく名曲になるはずだ。
 

 
▶︎The O’Reillys and the Paddyhats 「Rise Up, Tear Down」
Streaming : https://paddyhats.bfan.link/rise-up-tear-down
2011年、ドイツ・ゲヴェルスベルクで結成された7人組アイリッシュパンク・バンド、The O’Reillys and the Paddyhatsのシングルでミュージックビデオにもなっている。ヨーロッパで絶大な人気を誇り、これまでに3枚のフル・アルバムを発表しており人気実力ともに折り紙付き。ドイツ出身のパンクバンドとして、世界中をツアーしてきたミュージシャンの視点に立った時、彼らは「人生には、自分が信じるもののために立ち上がり、戦わなければならない時がある」ことを知った。あらゆる国の、あらゆる文化の、あらゆる肌の色、性的指向、個性を持った人々に出会い、その多様性が人生をエキサイティングでカラフルなものにしてくれると信じており、自分たちの寛容、人間の尊厳、人間性を信じて歌うこの曲、「F*ck all N*zi sc*m」のフレーズはあまりにストレートだが、多様性を認めないという多様性が多様性ではないことの揺るがなさをパワフルなミュージックビデオから感じ取れるはずだ。
 

 
▶︎The Young’uns 「Borrowed Boots」
Streaming & Download : https://theyounguns.bandcamp.com/track/borrowed-boots
2023年に発表された彼らのアルバム『tiny notes』は、自ら命を絶ってしまった様々な人々の生きた歴史を一つ一つ物語にした作品で、特に、娘を自死で亡くした父親3人のために作った「Three Dads Walking」は、父親たちの語りと共に、その傷を癒すための登っていく山の途中でのパフォーマンスを収めたビデオと共に発表され聴くものの涙を誘った。盲目のシンガーDavid Eagle含むトリオ編成のコーラスグループであるThe Young’unsは、アイリッシュフォーク・シーンで人気を持ち、これまでに多くのヒット曲をリリースしてきた。2024年リリースされた「Borrowed Boots」は、汚れた靴でバーへの立ち入りを拒否された男が、好きな女性と踊るためにブーツを借りてダンスフロアに現れた、というパブでの小さな小話のような歌であるが、「小さなことが私たちの人生を作る、そして世界を作る。彼が兄にブーツを借りたあの夜のように」というフレーズで締めくくられている。小さな外国文学の短編のような楽曲を大切にしたいと思える。

BACK TO LIST

ARCHIVE

PAGETOP