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2021年を振り返る : スカパンク/アイリッシュパンク、今年の名盤10選

2021.12.31

 

久々にガツンと「盛り上がっている」と実感出来た2021年のスカ・シーン。多くのベテランバンドもアクティヴだったし、フレッシュなバンドも続々と頭角を表してきた。Skatune Networkというシーンのインフルエンサーの存在も大きかったように感じる。コロナ禍であってもポジティヴに、そしてクリエイティヴに動き続けた世界のスカバンド、レーベルにはリスペクトしながら、今年リリースされたスカ、そして一部アイリッシュ・サウンドを鳴らす作品を交えた名作をピックアップしてみた。PUNKLOIDのSpotifyではシングルも合わせたベスト・プレイリストを公開しているのでこの機会にぜひフォローしてみて下さい。

 

 

The Mighty Mighty Bosstones 『When God Was Great』
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1983年から活動するマサチューセッツ州ボストンのレジェンド、The Mighty Mighty Bosstonesの3年振り通算11枚目のスタジオ・アルバムは、5月7日にHellcat Records / Big Rigからリリースされた。プロデューサーにHellcat Recordsの創始者でありRANCIDのメンバーであるTim Armstrongを起用した本作は、古き良きスカパンクのヴィンテージ・サウンドでプロダクションされており、安定感のあるアップチューン「DECIDE」から幕を開けると、ソフトなスカ・グルーヴに体を揺さぶられる「M O V E」、ミュージックビデオにもなっている「I DON’T BELIEVE IN ANYTHING」とポップな楽曲が続いていく。特に「I DON’T BELIEVE IN ANYTHING」は初期The Mighty Mighty Bosstonesのヴァイブスに溢れ、動画のコメントにはMTVのグローリー・デイズを懐かしむコメントや現役で活動する彼らに勇気付けられているというコメントも書き込まれている。

 

 

ゆったりと風に揺られるような「LONELY BOY」、リリックビデオとして話題になった「THE KILLING OF GEORGIE (PART Ⅲ)」などパンキッシュなリリックとエナジーに溢れた楽曲も多数収録されている。ラストを飾る「THE FINAL PARADE」には、Tim Armstrongをはじめ、The InterruptersのAmiee、ジャマイカン・スカの有名人Stranger Cole、FishboneのAngelo Moore、Stiff Little FingersのJack Burns、The Suicide MachinesのJay Navarro、Less Than JakeのChris Demakesなどなどスカシーンの重要アーティストら総勢40名以上が参加。「We were crankin, We were skankin’ all over the world」というフレーズが全てを物語る、スカへのリスペクト溢れる仕上がりになっている。

 

 

 

Dropkick Murphys 『Turn Up That Dial』
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1996年からマサチューセッツ州クインシーを拠点に活動するベテラン、Dropkick Murphysの4年振り通算10枚目のスタジオ・アルバムは、4月30日にBorn & Bredからリリースされた。前作『11 Short Stories of Pain & Glory』はダークでシックなスタイルであったのに対し、本作は明るくアップテンポな楽曲が中心となっている。これは、世界を襲った新型コロナウイルスが世界中で蔓延し混沌とする世の中に、「2020年がいかに最悪な年だったか」を歌うより、人々を明るく盛り立てるようなアルバムにしなくてはいけないという使命に駆られたからだとボーカリストのKen CaseyはKerrangのインタビューで語っている。

また、もう一人のボーカリストAl Barrにとっても父を亡くしたことから、明るくそして力強い歌声で前向きに生きていく力を与えているようにも感じる。「I Wish You Were Here」は昨年の12月にミュージックビデオとして公開され、大切な人を亡くした人達の胸を打つ楽曲として話題となった。「I know in my heart That we’ll meet again I know deep inside This isn’t the end」というフレーズは彼ららしくもあり、アイリッシュパンクらしいとも言える。動画に寄せられたいくつかのコメントを読むと「息子を亡くした悲しみに打ちひしがれていたが、家族でこの曲を聴き涙した。美しい楽曲をありがとう」、「夫を突然亡くし、どのように彼なしで生きていけばいいか分からなかったけれど、この曲を聴き彼を忘れることなく、いつもそばにいてくれると思いながら生きていこうと思います I Wish You Were Here.」など涙なしでは読めないコメントに溢れている。

 

 

こうした楽曲だけではなく、「Middle Finger」や「L-EE-B-O-Y」といったアップチューンも多く、2021年12月に公開された「Good As Gold」では、部屋でレコードを聴く未来の音楽家へパワーを与えるようなディレクションがなされており非常に印象的だった。アイリッシュ・パンクが人々に与えるポジティヴなエナジーに溢れた、Dropkick Murphysから世界中の人々への応援歌が詰まった一枚。

 

 

 

Catbite 『Nice One』

 

ペンシルバニア州フィラデルフィアを拠点に2018年から活動する女性ボーカル・スカ、Catbiteのセカンド・アルバム。ワールドワイドなラインナップが揃うスカのインターナショナル・レーベル、Bad Time Recordsからファーストアルバム『Catbite』に続き発表された。クラシックなスカの響き、特にマイルドなオルガンの音色がCatbiteサウンドのポイントと言えるだろう。

 

 

ソフトでヴィンテージなビートに絡むメロディ、そしてBrittanyのゴージャスなボーカルは現行スカ・シーンの中でも頭一つ抜きん出たセンスだと言える。The SpecialsやElvis Costelloといったところから直接的な影響が感じられる「Bad Influence」は彼女達の代表曲と言えるだろう。

 

 

 

Abraskadabra 『Make Yourself At Home』

 

2010年からブラジル・クリティバを拠点に活動するスカパンクバンド、Abraskadabraの3年振り通算3枚目のスタジオ・アルバムはBad Time Recordsと契約してリリースとなった。2019年には来日も果たし、アンダーグラウンドなスカシーンで名を馳せている彼ら。切なく哀愁を漂わせながらも前向きなポップパンク・サウンドに優しく絡み合うホーンセクションが心地良い。

 

 

楽曲毎にリードボーカルが変わっていく自由なスタイルも楽しい気持ちにさせてくれるはずだ。ミュージックビデオになっている「Do We Need a Sign?」や「Closer to the Ground」他、Less Than JakeやKEMURIを彷彿とさせるサウンドでとても聴きやすい作品に仕上がっている。

 

 

 

 

The Interrupters 『Live in Tokyo!』

 

2018年にリリースしたアルバム『Fight the Good Fight』から3年振りのリリースとなった作品はバンドのキャリア通じて初となるライブ・アルバムだ。しかも2019年初来日を果たした際に出演したサマー・ソニックでの音源ということもあり、ライブを目の当たりにしたファンはもちろん、日本のスカ・ファンは必聴の作品になっている。この作品と合わせてチェックしてもらいたいのが、今年公開され、現在はThe InterruptersのオフィシャルYouTubeチャンネルで公開されている映像作品『This Is My Family!』だ。

 

 

サマーソニック出演時の映像に加え、ドキュメンタリーテイストで描かれたThe Interruptersというバンドのリアルを感じることが出来る。個人的にライブ・アルバムはこうしたベスト・リストには入れないが、コロナ禍で世界中でライブ活動が制限された2021年、この作品が希望となってスカシーンを明るく照らしてくれたことは忘れられない出来事だと思い、ベストリストに選出した。1日も早くスカ・バンド達が世界中を飛び回り、フロアを沸かせてくれる日が訪れて欲しいと心から感じられた一枚。

 

 

 

Big D and the Kids Table 『Do Your Art』

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The Mighty Mighty BosstonesやDropkick Murphy’sに次いでマサチューセッツを代表するスカパンク・レジェンド、Big D and the Kids Tableの2年振り通算11枚目のスタジオ・アルバムは、2009年リリースの『Fluent in Stroll』以来12年振りにSideOneDummy Recordsへ復帰しリリースされた。90年代メロディックパンク・シーンにおいても彼らの存在感は大きく、幾多のコンピレーション・アルバムの中で彼らの名前を目にしてきたファンは多いだろう。「なんとなく名前は知っているけど、そこまで印象的な作品がない」という人にとって、この作品からでも是非Bid D and the Kids Tableに出会ってもらいたいと思える、クラシックなBig Dヴァイブス溢れた作品になっており、「New Day」のミュージックビデオのディレクションが非常に素晴らしく、スカの魅力をたっぷり感じられるはずだ。

 

 

ファストなパンク・チューン「Too Much」、ミュージシャン、デザイナー、メイクアップ・アーティスト、ストリート・ペインター、ダンサー、料理人などなどあらゆる分野におけるクリエイティヴな人をリスペクトする「Toyed」も必聴ナンバーだ。20年以上活動するベテランらしい安定感と遊び心溢れる素晴らしい作品。

 

 

 

Bruce Lee Band 『Division in the Hearland』
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90年代中頃からスタートしたMike Park在籍のバンドBruce Lee Bandの7年振りの新作は、もちろんAsian Man Recordsから2021年5月にリリースされた。現在のラインナップはMike Parkに加え、ソロ・ミュージシャンとして大人気のJeff Rosenstock、MU330などで知られるDan Potthast、Danと共にDeath Rosenstockに在籍し、The ChinkeesでMikeと一緒だったKevin Higuchiという4名。

 

 

Mikeはコロナ禍以前、ずっとずっと前から世界平和をテーマにバンド、そしてレーベルを通じて活動してきた人物で、現代アメリカの様々な人種問題にも韓国系アメリカ人の視点で発言してきた。本作も「STOP ASIAN HATE」というキーワードが飛び出してきたり、ポリティカルなメッセージをポップなサウンドに落とし込んでいる。韓国語のナンバー「비 엘 티 (BLT)」もキレキレのスカパンク/スカコアで楽しませてくれる。永遠のアンダーグラウンド・スカパンク・レジェンド、Mike Parkの懐の深さを感じられる一枚。

 

 

 

Joystick 『I Can’t Take it Anymore』

 

2010年からルイジアナ州ニュー・オリンズを拠点に活動するスカパンク/スカコアバンド、Joystickの4年振り通算5枚目のスタジオ・アルバムは、4月16日にBad Time Records / Stomp Recordsからリリースされた。90年代メロディックパンクシーンを彷彿とさせる懐かしいスカパンク/スカコア・サウンドは、時代遅れどころか一周回って今、超クールなのかもしれない。

 

 

カオスなストーリー仕立てのミュージックビデオ「Rinse and Repeat」はそんな彼らのヴィジュアル、ヴァイブスを感じられる。曲名だけみても「GGGGhost」、「Carrot and Stick」、「Worm Food」など、なんとも言葉にし難い”あの頃の”スカパンクの雰囲気が感じられるだろう。Fat Wreck ChordsのPEARSからボーカリストZach Quinnをフィーチャーしたショートチューン「7675」も彼ららしいポップさに溢れている。

 

 

 

We Are The Union 『Ordinary Life』
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2005年からミシガンを拠点に活動するスカパンクバンド、We Are The Unionの3年振り通算5枚目のスタジオ・アルバム。2013年に一度解散するも新メンバーを迎え、2015年に再始動。SKATUNE NETWORKでの活躍で知られるJer HunterやドラマーBrent Friedmanが加入したことでバンドサウンドもグッと厚みを増し、前作『Self Care』がヒット。本作はBad Time Recordsの強力なバックアップの元リリースされた。

 

 

リードボーカル/ギターであるReade Wolcottがトランス・ウーマンであることを発表してから初となる作品は、Readeの心情を綴った楽曲も多く、スカシーン以外からも注目を集めることとなった。特に「Boys Will Be Girls」はミュージックビデオのディレクション含め、多くのトランスジェンダー達から高く評価されている。ポップパンクにスカをブレンドしたサウンドからピュアなスカ・サウンドへと進化したWe Are The Unionがそのアチチュードも含め、シーンでの存在感を見せつけた作品。間違いなくバンドにとって分岐点となる作品。

 

 

 

Half Past Two 『Half Past Two』
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カリフォルニアを拠点に活動する女性・ボーカルスカパンクバンド、Half Past Twoの通算3枚目のスタジオ・アルバムは今年10月にPay Attention Recordsからリリースされた。2021年を象徴するアクティヴさを見せたバンドは、6本のミュージックビデオに加え、アコースティック・バージョンの企画動画他、クリスマス・シーズンには「Holiday」と名の付く名曲をカバーしたEP『Holiday』を発表した。

 

 

シーンにおいての存在感は抜群で、彼女達がスカシーンで話題にあがらなかった日はないだろう。ダンサブルでポップでありながら、大人っぽい落ち着きを放っているのが魅力で、「Some Nights」や「Shine」といった楽曲はCatbiteやJoystick、We Are The Unionといった現行スカのバンドらにはない輝きを持っている。「Scratched CD」といった遊び心溢れる楽曲もいくつか収録されており、セルフ・タイトルに相応しい一枚になっている。

 

 

2021年もスカパンク、アイリッシュパンクにたくさんのパワーをもらった。ポジティヴで前向きなヴァイブスは今の現代社会にとても必要だ。世界中でスカが鳴り響き、人々を笑顔にする2022年に期待したい。

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